第15回ステラジャム(国際ジャズオーケストラ・フェスティバル)は、大学27団体、中高7団体が出場。富士山麓河口湖ステラシアターにテーマ曲『スターブリッジ』が鳴り響き、今年もビッグバンドの祝祭が華やかに開催されました。

近年、参加団体のレベルアップがめざましく、またその実力差が伯仲しています。課題曲の上位7団体はノミニー7と完全に一致しています(順不同)。しかし自由曲では1団体だけノミニー7と違う結果となっています。自由曲で5位に入ったバンドが課題曲ではテンポオーバーしたため32位となり総合では17位でした。
一方、あるバンドは自由曲が17位でありながら課題曲が6位であったため、総合でノミニー7入りしました。昨年の講評や今年の説明会で述べた通り、「課題曲を制する者は総合を制す」が実証された形です。

さて、今年の課題曲『Take Me Out Swingin’』(作曲:Francisco Torres)はミディアムスイング曲。途中で2回Cha Chaに変わり、その都度スイングに戻って終わります。指定テンポは「110」で、これより速いと減点の対象となります。今年は課題曲テンポオーバーのバンドがほとんどありませんでした。各バンドがさまざまな工夫をこらして、ユニークな解釈で「みんな大好き課題曲」を演じていたのが印象的でした。

今年はノミニー7に中高生バンド3団体が入賞したことは大きなニュースです。しかも課題曲のチャンピオンも高校生。ステラジャム15回の歴史で、大学ジュニアバンドのレベルはめざましくアップしましたが、中高生もまた大学と対等に渡り合えるようになってきたのです。

今年から新設されたベストSR賞。MCをSR(show runner)と改称し、ショーを作り上げる司会者がいるバンドを高く評価する試みです。これについても、ラジオDJ風や航空機アナウンス風など、多くの団体が斬新な取り組みを披露しました。初代のベストSR賞は東京大学Jazz Junk Workshopが受賞しました。
全体として司会、進行、聴衆とのコミュニケーションを総合的に組み立てる楽団が増えてきました。ビッグバンドが「芸術」であり「エンタテイメント」でもあることを、ステラジャムではさらに磨き上げたいと思います。

ノミニー7は、順不同で以下の団体がノミネートされました。Big Sounds Society Orchestra(明治大学)、Jazz Junk Workshop(東京大学)、北陵ウインドアンサンブル(神奈川県立茅ヶ崎北陵高等学校)、Royal Sounds Jazz Orchestra(青山学院大学)、Super Blue Birds(開成ジュニアアンサンブル)、Los Guaracheros、甲南ブラスアンサンブルKBE2025(甲南高等学校)。それぞれに独自の音楽性を追求したことが印象的でした。

審査員別に総合得点を分析すると、ステラジャムチャンピオンを獲得したLos Guaracherosに1位を付けたのは6名の審査員のうち2名で、2名は別のバンドを、他の2名はさらに別のバンドに最高点を与えています。つまり意見が三分されていました。
課題曲の採点を分析すると、ゲットベター・チャンピオンの茅ヶ崎北陵高校を1位と評価した審査員は2名、他の4名中2名は別のノミニーバンドを1位とし、他の2名はそれぞれ別のバンドに最高評価を与えておられます。
さらに興味深いのは自由曲で、ユニークセレクション・チャンピオンとなったLos Guaracherosは審査員6名中2名が1位評価ですが、他の審査員4名はそれぞれ別のバンドを1位としています。音楽性が多様化したことで、審査員各人の嗜好が反映されたものと思われます。
ただ、ステラジャムの一貫した目標は「GET BETTER!」です。他者との比較ではなく、去年の自分から今年の自分へ、そして来年の自分へとステップアップをめざすことを重視します。6名の審査員が収録した自分たちへのリアルタイムコメントを聴き込んで、さらに他バンドへのコメントと聴き比べて、研究を重ねていただければ幸いです。

ステラジャム 3日目は富士急ハイランドへ会場を移し「JAZZ-Q」というフェスティバルを開催。リサとガスパールタウン噴水前、トワトモ広場、第1入園口(高飛車とFUJIYAMAの前あたり)の3箇所において、ビッグバンド22団体とコンボが演奏を披露しました。天気にも恵まれ、たいへん盛り上がりました。

GET BETTERの姿勢は出場者も、審査員も、我々運営スタッフも同じです。さらに洗練されたフェスティバルへと一緒に成長していきましょう。教育イベントとして、競技として、そしてエンタテイメントとして、これからも成長できれば幸いです。


総合プロデューサー 黒坂洋介