今年も河口湖ステラシアターに『STAR BRIDGE 〜星空にかける橋〜』が鳴り響き、ビッグバンドの祭典が華やかに幕を開けました。第13回ステラジャム(国際ジャズオーケストラ・フェスティバル)は、大学27団体、小中高6団体を迎えて開催。エントリーしていた東海大学Swing Beats Orchestraは体調不良者が多く出たため、残念ながら直前に出場辞退となりました。来年は元気に演奏してくださるのを楽しみにしています。

課題曲『TELL ME AGAIN』(作曲:Wally Minko)はミディアムスイング曲。途中でリズムがラテンに変わり、またスイングに戻ります。音楽の理解度や演奏技量はもとより、アイデア次第でいろんな表現が可能な楽曲です。全参加団体が同一曲を素材に切磋琢磨することで、日本ビッグバンド界の基礎力を底上げできているのを感じます。

自由曲では、各バンドが多彩な選曲や演出を繰り広げました。与えられた15分間をひとつの「ショー」と考え、司会、進行、聴衆とのコミュニケーションを総合的に組み立てる楽団が多く見られました。ビッグバンドが「芸術」であり「エンタテイメント」でもあることを確認する場として、ステラジャムが機能しているようです。

総合点上位7団体(ステラジャムノミニー7)は、出演順に以下の団体がノミネートされました。Big Sounds Society Orchestra(明治大学)、High Society Orchestra(早稲田大学)、Los Guaracheros(東京工業大学)、甲南ブラスアンサンブルKBE2023(甲南高等学校)、The Second Home Jazz Orchestra(同志社大学)、Royal Sounds Jazz Orchestra(青山学院大学)、Light Music Society。それぞれに独自の音楽性を追求し、演奏技術を磨き上げたことが印象的でした。

審査員別に総合得点を分析すると、ステラジャムチャンピオンを獲得したLos Guaracheros(東京工業大学)に1位を付けたのは6名の審査員のうち4名で、あとの2名はそれぞれ異なるバンドを1位と評価しています。同じ4名が課題曲でもLos Guaracherosに1位を付けています。

しかし自由曲の評価は分かれていて、Los Guaracherosに1位を付けたのは2名だけで、あとの4名は異なるバンドを1位と評価しています。音楽性が多様化したことで、審査員各人の嗜好が反映されたものと思われます。

総合点で見ると1位から7位の差は7.5点でした。課題曲は1位と7位の差が8点、自由曲は6.5点でした。こうして見ると課題曲で点数に差がつく可能性を考えてよいでしょう。テンポオーバーの5点減点、タイムオーバーの10点減点が大きな影響を与えることは言うまでもありません。

ただ、ステラジャムの一貫した目標は「GET BETTER!」です。他者との比較ではなく、去年の自分から今年の自分へ、そして来年の自分へとステップアップをめざすことを重視します。6名の審査員が収録した自分たちへのリアルタイムコメントを聴き込んで、さらに他バンドへのコメントと聴き比べて、研究を重ねていただければ幸いです。

ステラジャム 3日目は富士急ハイランドへ会場を移し「Jazz Q」というフェスティバルを開催。リサとガスパールタウン噴水前、トワトモ広場、園内ZOKKON前広場の3箇所において、ビッグバンド16団体、コンボ2団体が演奏を披露しました。天気にも恵まれ、ヨーロッパ風の街並みやコースターのシルエットを背景にビッグバンドの音色が響き渡るのは爽快でした。もちろん演奏前後には園内でアトラクションを存分に楽しんでいただきます。

GET BETTERの姿勢は出場者も、審査員も、我々運営スタッフも同じです。つねに新鮮な気分で、いっそう洗練されたフェスティバルへともに成長していきましょう。今後も教育イベントとして、競技として、そしてエンタテイメントショーとして、さらなるレベルアップをはかりたいと考えています。

総合プロデューサー 黒坂洋介