第12回ステラジャム(国際ジャズオーケストラ・フェスティバル)は、大学24団体、小中高5団体を迎えて開催されました。 コロナ感染拡大によって2020年と2021年は開催中止。3年ぶりのステラジャムは、パンデミック第7波の中、くふうを重ねてなんとか実施できました。この難しい状況下で、とにかくフェスティバルが開催できたこと、29ものバンドが河口湖まで足を運んでくださったことがなによりの成功であり喜びです。主催者の一員として心から感謝を申し上げます。 今回は「野口茜追悼大会」でもありました。審査員として、ゲストプレイヤーとして、そしてテーマソング『STAR BRIDGE 〜星空にかける橋〜』作曲者として、ステラジャムと深く関わってくださった野口茜さん。長期にわたる闘病の末、残念ながら2021年3月に帰らぬ人となりました。野口茜さんが残してくれた音楽に見守られながら、ビッグバンド文化振興のためにフェスティバルを盛り上げていく決意を新たにしています。 課題曲『MAKE UP YOUR MIND』(作曲:Wally Minko)は途中に変拍子が入る作品。解釈次第でいろんな表現が可能となる奥の深い楽曲でした。音楽の理解度や演奏技量が如実に出てしまう、そういう意味では難曲とも言えます。全参加団体が同一のミディアムスイング曲を素材に切磋琢磨することで、日本のビッグバンドの基礎演奏力を底上げできていると思います。 自由曲では、各バンドが多彩な選曲や演出を繰り広げました。与えられた15分間をひとつの「ショー」と考え、進行、雰囲気作り、聴衆とのコミュニケーションを総合的に組み立てる楽団が多かったことに明るい未来を感じます。 また、Royal Sounds Jazz Orchestra(青山学院大学)、Los Guaracheros(東京工業大学)、Light Music Society、Big Sounds Society Orchestra(明治大学)、The Second Home Jazz Orchestra(同志社大学)など、それぞれに独自の音楽性を追求し、高度な演奏を繰り広げたことも印象的でした。 審査員別に総合得点を分析すると、ステラジャムチャンピオンを獲得したRoyal Sounds Jazz Orchestra(青山学院大学)に1位を付けたのは2名で、あとの4名はそれぞれ異なるバンドを1位と評価しています。音楽性が多様化したことで、審査員各人の嗜好が反映されたものと思われます。 しかしながら合計点で見ると上位6団体はきわめて僅差であり、1位から6位の差がわずか2.25点しかない熾烈な争いでした。テンポオーバーの5点減点、タイムオーバーの10点減点がいかに大きな影響を与えるか理解いただけるでしょう。 とはいえ、ステラジャムの一貫した目標は「GET BETTER!」です。他者との比較ではなく、去年の自分から今年の自分へ、そして来年の自分へとステップアップをめざす。来年以降はそれを「ベストポイントアップ賞」復活によって称える予定です。ランク(順位)のアップではなく、ポイント(得点)の伸びを評価する賞です。 ステラジャム 3日目富士急ハイランド「リサとガスパールタウン」の演奏会に、今年は10団体が参加してくださいました。天気にも恵まれ、ヨーロッパ風の街並みに富士山を背景としてビッグバンドの音色が響き渡るのは爽快でした。もちろん演奏前後には園内でアトラクションを楽しんでいただけます。「リサとガスパールタウン」もステラジャムのサテライト会場として定着してきました。 GET BETTERの姿勢は出場者も、審査員も、我々運営スタッフも同じです。つねに新鮮な気分で、いっそう洗練されたフェスティバルへと成長していきましょう。今後も教育イベントとして、競技として、そしてエンタテイメントとして、さらなるレベルアップをはかりたいと考えています。 総合プロデューサー 黒坂洋介