第11回ステラジャム(国際ジャズオーケストラ・フェスティバル)は大学生の部36団体、小中高ユースの部7団体、ゲストとしてカリフォルニア・ジャズ音楽大学Blue Ensemble、台湾大学Riot Jazz Orchestra、ラブジャミ(LOVE JAMMIN’)、愛知大学Blue Stars Jazz Orchestraを迎えて盛大に開催されました。 全参加団体が同一のミディアムスイング課題曲を競い合うことで、日本のビッグバンドの基礎演奏力が底上げされているのを感じます。今年から課題曲にコンダクターが立つことをルール化したため、指揮の創意工夫においてもしのぎを削ることになりました。今後の技術向上が楽しみです。 自由曲(ユニークセレクション)では、各バンドの選曲や演出が多様化。与えられた15分間をひとつの「ショー」と考え、進行、雰囲気作り、聴衆とのコミュニケーションを総合的に組み立てる楽団が増えてきました。 また東京工業大学Los Guaracheros、青山学院大学Royal Sounds Jazz Orchestra、慶応大学Light Music Society、そして早稲田大学High Society Orchestraなど、それぞれに独自の音楽性を追求し、高度な演奏を繰り広げたことが印象的でした。 音響面では、昨年から新たな試みを導入。原則としてMC、ソロ、ピアノだけがPAを通し、あとは生音で演奏しています。そのためか初年度(2018)は、多くの楽団が前年と比べて点数を落としました。 しかし今年は全43団体(大学+小中高)のうち26団体が前年よりも点数を伸ばしています。グランプリ同士を比較した場合、大学も小中高も昨年より得点が数点アップしています。つまり生音演奏に多くのバンドが適応し始めたと言ってよいでしょう。 この生音スタイルは、ステラシアターのような難しいホールにおいて、自分たちのアンサンブルをどう表現するかという新たなチャレンジを生み出しました。コンダクターの役割が大きいのは言うまでもありません。加えて事前のサウンドチェックや、後日YouTubeで公開される動画から最適のバランスを探る、そんな課題に取り組む機会を生んだと考えています。 課題曲では、大学の部で8団体、小中高の部で1団体がテンポオーバー減点されました(総合点から5点のマイナス)。残念なことにこれらのテンポオーバー団体は、大きく順位を下げています。バンドによって状況は異なりますけれども、あるバンドはもしテンポオーバーしていなければ、10位ほどランクアップしていた計算になります。 大学の部1位から7位の差がわずか4.5点しかない熾烈な争いであることを考えれば、テンポオーバーの5点減点がいかに大きな影響を与えるか理解いただけるでしょう。 とはいえ、ステラジャムの共通目標は「GET BETTER!」です。他者との比較ではなく、去年の自分から今年の自分へ、そして来年の自分へとステップアップをめざす。それはベストポイントアップ賞という形で讃えられます。ランク(順位)のアップではなく、ポイント(得点)の伸びを評価する賞です。 大学の部では成蹊大学Compal Sounds Jazz Orchestraが、小中高ユースの部では敬和学園高校Jazz Hornetsがこの賞を獲得しました。ほかにも東北大学New Forest Jazz Orchestra、日本大学White Rhythm Echoes Orchestra、慶應義塾大学K.M.P.New Sound Orchestra、甲南高校KBE2019が、昨年に比べて大きく点を伸ばしています。 GET BETTERの姿勢は出場者も、審査員も、我々運営スタッフも同じです。フレッシュな気分で、さらに磨き上げられたフェスティバルへ成長していきましょう。今後も教育イベントとして、競技として、そしてエンタテイメントとして、より一層のレベルアップをはかりたいと思います。 総合プロデューサー 黒坂洋介